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初音ミク関連 11月はじめ頃、後輩の話から初音ミクの存在を知る。 saturation(@YouTube)でみっくみくにされる。 11月なかば、ニコニコID取得。 くじら12号にフルミックにされる。 こねこのろっくんろーぅに、それはもう、ボコボコにされる。 2008年1月なかば、「saihate」(sm2053548)中毒になる。 使用言語(得意な順に) Fortran 90 日本語 C# Java FORTRAN 77 Visual Basic .NET perl 英語(話せるのか?) C C++
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轟音と悲鳴。 前後からの音に挟まれながら、篠崎七雄 しのざきななお は身構える。 左足を軽く踏み出し、右足で体重を支えて右肩を引き、右手に持った『それ』を腰溜めに真っ直ぐ正面……体長十数メートルのラルヴァに向ける。 『それ』は槍。 振り回し、投げるために用いるような、刃をつけた細い槍 スピア ではない。 ただ真っ直ぐ前進し、眼前の敵を蹂躙するための、突撃槍 ランス 。 ラルヴァは低く唸りながら、アスファルトを踏み砕き、電柱を薙ぎ倒しながら駆けて来る。 背後の悲鳴は次第に掠れ、やがてすすり泣きに変わっていた。 「おい」 七雄の呼びかけに、俯いた少女は目だけを向ける。言葉の変わりにしゃくりあげる音を返事として受け取り、彼は嘆息した。 「助かりたいか?」 「うん」 「生きたいか?」 「……うん」 「生きて、前に進めるか?」 「……それは」 「どうなんだ?」 言い淀む少女に、七雄は首だけ振り向き、睨むように見据える。 「俺は前に進む以外の道を知らない。俺の足はただ前に踏み出すだけだ」 そして問う。お前はどうだと。 「前に進むことが出来るか? 春峰央歌 はるみねおうか 」 「私は……」 「お前の力は、そうしてただ座して待つためのものではないだろう?」 「で、でも、私が力を使えば、みんなが……」 「心配するな。この学園の連中は、変態的にタフなやつが多い。ちょっとくらい背中を強引に押されたくらいで、へばったりはしないさ」 ラルヴァの巨体がもうすぐそこまで迫っている。あと数秒で彼らは踏み潰されるだろう。 絶体絶命を目の前にして、彼女の逡巡は長い。それを、七雄は黙して待つ。 「前に、進みたい、です」 途切れがちな、しかし力強い、言葉。 「なら、俺が先駆けだ」 声と踏み足を答えとし、七雄の体が前に出る。 もはや数歩の距離に居る巨大なラルヴァに向けて、彼は進んだ。 「しっかり付いて来いよ。この道を、真っ直ぐだ」 真っ直ぐ、そう言い聞かせて、歩みを加速する。 雄々と叫び、槍を構え、ただ、前へ、前へ。 勢いに乗ったラルヴァは、自らの身体で七雄を押し潰そうと、突き進んでくる。 激突。 槍の切っ先が、ラルヴァの額に届く。その速度差は明らかにラルヴァに分がある。 だが、 『ぐぅぅぁるららるるるぁ!』 ラルヴァの苦悶の絶叫が響き渡った。 「くっ!」 七雄は構わず、歩み続ける。 「おお!」 踏んでは前に。 「おおおお!」 駆けては前に。 「ああああああああああああああああああああああ!」 馳せては前に。 やがて断末魔の叫びも消えたときには、真っ二つに裂かれたラルヴァの巨体が転がっていた。 息絶えたラルヴァは風に吹かれて次第に崩れていく。 ラルヴァの死体が消え去り、後には破壊されつくした道路と、真っ直ぐに佇む少年の姿が残った。 七雄は央歌を振り返り、左の手を誘うように差し出した。 「さあ」 少年は言う。 「前に、進め」 少女は、震える足で立ち上がると、ゆっくり、ゆっくりと最初の一歩を踏み出した。 【突撃のストレイトブースター】-プロローグ 1、問題 双葉学園に立ち並ぶ校舎の中には、生徒たちがあまり訪れない場所もある。 その一つ、理事棟は教師や学園運営者たちのための建物だ。 「運命の後押し、ですか?」 「そうだ。彼女の、春峰くんの異能は他者の運命を加速させるもの」 理事棟の大会議室に、今、大勢の大人が集まっていた。 彼らの年齢、服装は様々だ。 スーツ姿の者が多いが、仏教、神道、カトリック、プロテスタント、ヒンドゥー、その他諸々、様々な宗教的な装いを見せるものも少なからずいる。 また他にも、軍服の男、ラフなジーパン姿の男、いかにも怪しげな黒装束の女、和装の老人など、バラエティに富んでいる。 会議室の奥まった位置には大きなディスプレイがあり、その横でスーツの男の一人が説明をしていた。 画面に映し出されているのは、春峰央歌という一人の生徒の顔写真とプロフィールだ。 「運命干渉の異能者。この学園でも数少ない種類の異能だが、醒徒会の成宮くんや学園長のお孫さんもこれに含まれる。決して、ありえない異能でもない。神那岐のような破格の例はさすがに希少ですが」 「……全然、同じ系統とは思えませんけど?」 口を挟んだのは、会議室の中ほどに座る、シスター服の女性だ。 「占いから過去の改変に到るまで、とにかく人が『運命』という言葉を用いて言及するもの全てに、我々は運命干渉という位置づけをしている。例えば『ザ・ハイロウズ』は人の特定の社会的運命を限定的に予言する能力だ」 男の言葉に対して、黒装束の女が不意に声をあげる。 「予言が運命干渉とは、随分な言い方ね。それでは私がタロットを引いただけで――」 「もちろん」 彼女の言葉を無理やり断ち切って、男は言葉を継ぐ。 「運命というものを酷く強引に、大雑把に解釈してのことだ。異能の定義についてはまた別の機会に」 男はふうと溜息一つ。様々な立場の人間が集うここでは、迂闊な言葉は場を荒らす原因となりかねない。 宗教的な観念、異能に関する研究の主張。どんな反応を引き出すかわからない。 「それで、運命を加速すると、具体的にはどうなるんですか?」 「言葉の通りだ。いずれ来る未来、その人間に訪れるはずの運命を早める。たとえば、ある人間が宝くじを当選する運命を持っていたとして、その運命を加速すればすぐにも相応の幸運を得ることが出来る」 「そんな破格の異能が……ありえるのですか?」 「効能 メリット が破格な分、対価 デメリット も非常に高い。魂源力 アツィルト の消耗だけでは済まない対価がね」 「やっぱり、そういうのがついて回るのね」 またしても口を挟む黒装束の女を男が睨むも、彼女は涼しい顔で続ける。 「私たちが千年研究し続けてようやく練り上げる力を、生まれたときから使えるというんですから、代償はあってしかるべきだわ」 「……ともかく、運命の加速というのはただ有用な異能とは言いがたい。例えば、一人の人間の運命を百年分加速したら、どうなる?」 「ええと……百年分の様々な出来事がやってきて……」 「死ぬのさ。その人間が百年以上生きるというなら別だが、ほぼ間違いなく寿命を迎える」 「あ、なるほど……って、凄くおっかない異能じゃないですか、それ」 「恐ろしくない異能などというものは無いと思うが……扱いを気をつけなければいけない異能であることは確かだ」 そこで今度は和装の老人が口を開く。 「……だが、今回の作戦には必要な異能、ということだな?」 「そうだ」 男は明らかに年長と思われる相手にも口調を変えない。 「運命干渉というのはとてもデリケートな能力だ。同じ場所で二種類以上の運命干渉があると、過干渉が起こり、その能力は打ち消し合う」 「それも運命干渉系のデメリットの一つか」 「デメリットではあるが、今回はそれが利用出来る」 「敵ラルヴァの運命閉塞を過干渉によって突破するわけだ。その女子生徒はいってみれば、ラルヴァに到るまでの露払いだな」 「彼女だけでなく、現在制御可能な学園中の運命干渉系異能者は総動員する。先程言った、成宮くんや双葉敏明くんらとあわせて、現在投入可能な人員は五人だ。他にも、運命干渉系の異能者はまだいるが……」 「今回の作戦に投入するには不安がある、かね?」 「そうなるな。そして、彼らを護衛し、現場で実戦闘を担当する異能者をチームとする」 「しめて二個小隊程度か。君の言葉ではないが、恐ろしい異能者がそれだけの軍隊を整えるというのは脅威だね」 老人の皮肉げに笑うと、今度は別の男が手を上げた。こちらは派手なパンクルックだ。 「双葉区の警備は大丈夫なのか?」 「成宮くん以外の醒徒会役員は基本的に待機です。不測の事態の場合、出動を要請するかもしれませんが、他にも有力な生徒は残っています」 パンクが口を閉じると、しばし議場に沈黙が下りた。 「……他に質問はないな? では、今後の作戦指揮は私が続ける。各人は対応を頼む。特に、報道と政界への対応は厳しいだろう」 「まったくだな……まさか」 老人は心底疲れたような表情で呟く。 「町ひとつ、ラルヴァの力で閉鎖されてしまうとは」 「閉鎖されたわけではない。あくまで、その町の中で運命が閉塞しているだけだ」 「似たようなものだ。町の中のすべてが停滞すれば、時間が止まったも同然。そして、何者も出入りすることは出来なくなる」 「そして、それを突破するための運命干渉系異能者、か」 重苦しく囁かれた一言に、その場の全員が表情を改めた。 話し合いが一段落したと判断し、議場から人々が退出していく。 男は深々と溜息を吐く。そこに、シスターとパンクが近付いてきた。 「どうした? 二人もやることは多いのじゃないか?」 「そりゃもちろん、大忙しだけどな」 「聞いておきたいことがあるんです」 「……なんだ?」 「今回の作戦の要となる、春峰央歌さんのことですが……」 「そいつ、今年転入してきたばっかりじゃねえか。使えるのか?」 「使える、とは?」 「異能の制御訓練、戦闘経験、足りてるのかって聞いてんだ」 「異能の制御については、転入以前から完全にコントロールしていた。戦闘経験については、これから一週間の間に訓練で使えるレベルにする予定だ」 「一週間……舐めてんのか?」 パンクの声に険が混じった。目付き鋭く、唸るように男に迫っていく。 「そんな状態で戦場に立たせりゃ、足引っ張ることは目に見えてるんだろうが」 「……」 「あ、あの……私も反対です。まだラルヴァの知識もほとんどない女の子をいきなり実戦になんて……今回みたいな大規模な作戦に、しかも『最終兵器』として」 二種類の強い視線に晒され、男はしばし目を伏せて押し黙った。 彼らの主張は、結局は一人の少女の安全を気遣うものだ。同じ教育者として賛同してしまいたいという思いが彼の中にも生まれる。 「……だが」 それはできない。 「今回、敵ラルヴァに対して有効な『運命の操作』が出来る異能者は、春峰くんと双葉くんの二人しかいないのだ」 「ああ? 運命干渉系の異能者は五人って、さっき言っただろうが」 「その通りだ。成宮くんの能力のように運命を見聞きし、触れることが出来る異能者は全部で五人。そのうち、自らの意思で発動し、敵ラルヴァの運命閉塞の能力を打破できる威力の『運命操作』はその二人にしか……いや、性格には春峰くん、ただ一人にしか出来ない。双葉くんの能力『栄光と破滅の手 ハンズオブヒーロー 』は半分制御できていないも同然だからな」 「大層な名前のくせに、使えねえな」 「栄光と破滅、そのどちらの運命をも引き寄せられる代わりに、どちらがやってくるかわからないというのが、彼の能力の特性だからな」 「フン……それで、その『運命の操作』だけが有効ってのはどういうことだ?」 「言葉のままの意味だ。敵ラルヴァは、運命を閉塞させることで身を守っている。だが運命の閉塞さえ解除できれば、倒すことも容易だ」 「その閉塞を打ち消すだけなら、他のガキどもでも足りるって話だろ?」 「敵ラルヴァは町ひとつの運命を停滞させている。その周囲では、停滞はゆるやかだが、本体に近付くほど強まり、閉塞されていくことになる。成宮くんたちのような、運命に対する干渉の程度が低い能力では、ある程度以上には近づけない」 「力の強さの問題か?」 「強弱というより、質の問題だな。『運命を見る』という異能は、決して干渉の程度としては高くない。つまり、打ち負けてしまう。『運命の加速』『運命の引き寄せ』という、強烈な異能だからこそ『運命の閉塞』という力に対抗できる」 「……なるほどな」 一応の納得を得てパンクが口を噤むと、今度はシスターが首をかしげる。 「彼女以外の子供たちは、なぜその作戦に? 一人だけいれば事足りるような……」 「……敵が、そのラルヴァ一体だけならな」 「まさか、複数……?」 「運命閉塞を行っているラルヴァは一体だけらしい。だが、その停滞空間内部には、大量のラルヴァが存在していた。幸い、そのラルヴァたちも現在は運命の閉塞に巻き込まれているため、町には被害が出ていない。だが、生徒たちが突入すれば障害となる可能性がある。そのため、戦力の分散を行う」 「はぁ……わかりました。ところで、今回のような事態は初めてと聞いていますが、どうしてそんな解決策まで出ているのですか?」 「アドバイザーの意見だ」 「そのアドバイザーの意見ってのは当てになるのか?」 「他に意見を持ってくるような人間がいなかった」 「……まあ、ラルヴァの研究者は少ねえからなぁ」 「もしその対抗策が不完全な場合でも、アドバイザー本人が同行を申し出ているので、その場での作戦変更も可能だろう」 「オイオイ、現場に参加とは気合い入ってるな。どの学部の先生だ?」 「教員ではないらしい」 「あン?」 「そろそろ仕事に戻ろう。この作戦の如何に関わらず、しばらくは休みもとれそうにないな」 怪訝そうなパンクにはそれ以上とりあわず、男は会議室を後にした。 2、訓練 グラウンドに揃った数十名の生徒たちは、それぞれに何人かでグループを組んで集まっていた。 一週間後に控えた大規模侵攻作戦を伝えられ、どの顔にも緊張の色が浮かんでいる。 「いいかー、基本的にお前らのフラッグである運命干渉系異能者はサポート役でしかない。だが、そいつが居なければ町の中に入ることさえ出来ない。町と一緒に運命を止められたくなかったら、死ぬ気で護れ。わかったか!?」 『はい』『うっす!』『あーい』『にゃー』『オス!』 「本当にわかってるのか微妙な返事もあったが、まあいい。これから分隊ごとの訓練に入る。とりあえず最初だ。マニュアルを読みながら頑張れ。チームプレイを心がけろよ。それでは、始め!」 ジャージ姿の教師の号令で、生徒たちはめいめいに移動を始める。 その中で、双葉敏明と春峰央歌のいる二チームは、教師のところへ集まってきた。 「お前らは今回の作戦で要となる。春峰のチームは最有力侵攻ラインの西側から、双葉のチームは逆の東側からだ」 「先生、最有力って、どういうことですか?」 「地理条件が一番容易だろうということだ。停滞の中心部に向けて、真っ直ぐに大通りが走っていて、その入り口が東西にある。東側はラルヴァが多いようだが、西側はもう少し簡単に中心部へ進めるはずだ」 「うへ……こっち大変なのか」 「なんだ双葉、お前が弱音を吐いてどうする。戦うのはお前のチームメイトだぞ」 「そ、そうですよね……」 「大丈夫だよトッシー、ボクたちが護ってあげるから!」 元気良く胸を張った山崎巡理 やまざきめぐり の言葉に、隣に立つ河越明日羽 かわごえあすは も力強く頷く。 「心配するな、敏明クン。今回は心強い味方もたくさんいる」 「そうだよとっしー、私たちがついてるって」 「ぐあ、肩を組むなよ暑い。あとお前はとっしー言うな、高田」 「つれないなぁ」 高田春亜 たかだはるあ は突き飛ばされつつも、ニヤニヤと笑みを浮かべている。 「あ、アタシの瑞々しい肉体にひょっとして興奮しちゃう」 「……もうちょっと恥じらいとか持つべきだと思うんだが」 「ぐぬぬ……当ててんのよ作戦とは卑怯な……」 「メグ、なぜ自分の胸板を叩いているんだ」 「むきー! 板っていうなー!」 「オホン……言っておくが、お前たちのルートも二番目に楽なルートといえる。他のチームは……囮と言ってもいい。ひょっとすると、マズイこともありうる」 「マズイことって……」 「どれだけ万全の体勢でも、万が一がありうる。いいか、今回の作戦はお前たちに掛かっている。学友を少しでも助けたいと思うなら、可能な限り早く敵ラルヴァを倒せ」 『はい!』 それから彼らは教師による作戦中の行動の説明を受け、他の生徒たち同様チーム練習へと向かうこととなった。 「……はぁ」 説明を受けている間、質問も何もせず、一人俯いている生徒が居た。 春峰央歌だ。 「春峰?」 「……え、あ、なんですか?」 「訓練だ。早く行って来い」 教師に言われて慌てて振り返ると、すでに移動しているチームメイトたちの背中が見えた。 「……春峰」 「は、はい」 「今回の作戦はお前にかかってる。双葉は……今回は役に立つのかわからん」 「はぁ……」 「いや、あいつ自身が使えない奴だってわけじゃないぞ。あんな……ハーレム野郎ではあるが、それなりに訓練には真面目に取り組んでいるし、山崎と河越の補佐で何匹もラルヴァを倒した実績もある。ハーレム野郎ではあるが」 再び「はぁ」というファジーな相槌をうちつつ、央歌は思う。羨ましいのかと。 「だが、あいつの能力は確実さに欠ける。敵ラルヴァを倒すための場面で、うっかりおかしな運命を引き当てちまって失敗する可能性もある。だから、お前だけが頼りだ」 「……はい」 「お前は実戦経験が無いから、不安なのもわかるがな。お前のチームは強豪ぞろいだから、落ち着いて臨めば大丈夫だ。ほれ、行って来い」 央歌は頭を下げ、小走りでチームに合流した。 「す、すいません。お待たせしました」 「大丈夫? 緊張してるのかな?」 「その、だ、大丈夫、です」 「よし、じゃあとりあえず自己紹介からしようか。じゃあ、まずは俺から……」 チームの中で一番年長である大学生の異能者が、その場を仕切って話を進めていく。 彼は自分の名前や異能について説明すると、央歌に目を向け、 「次は春峰さん。よろしく」 「へ、は、はい! 春峰央歌です! その……私の異能は、運命を加速する『フェイトブースター』です……あまり、人間には使えない力です」 「使えないって、どうして?」 「その人の、その後に来る出来事を、な、なんでも、無理やり早めてしまうんです」 チームメイトからあがったもっともな質問に、央歌はなぜかしどろもどろになって答える。 「例えば……転ぶということが決まっていたら、加速した途端、何も無いところでも、転ぶんです。その人がどんな運命かを、事前に知ることは出来ないので、悪いこととか、良いこととか、選んで早めることは、出来ません」 「ふーん、でもそれくらいなら別にいいんじゃない? あっちのハーレム野郎……双葉よりは使えそうだ」 ハーレムさん人気だな、と妙なところに気を取られつつ、央歌はさらに俯く。 「こ、転ぶときって、なんとなく、つまずいたりとかしやすい場所で、心構えって、出来るでしょ? でも、加速すると、転ぶなんて思ってない、心構えのないところで、いきなり転ぶことになるから」 「つまり、思ってもみなかったことがいきなり起きてビックリするってことか」 「そ、そう、です」 「なるほど、あまり不用意には使わないほうがいいね。みんな、他に質問はあるかい?」 質問は特にあがらず、すぐに他のチームメイトの自己紹介に移っていった。 央歌はほっと胸を撫で下ろし、俯きながら彼らの言葉を聞く。 「篠崎七雄だ。俺の異能も、あまり融通の利くものじゃない。『止め難い前進 ストレイトトラック 』。俺が真っ直ぐ進み続ける限り、前進を妨げるもの全てを退ける。ただ、絶対に無敵というわけでもないし、止まったり曲がったりした瞬間に効果は完全に無くなる」 「条件が限定されているのか。でも、融通が利かないなんてものじゃないだろう。すごく使える異能のはずさ。特に今回は僕らは直線道路を進むことになるからね」 「まぁ、そうなるが……敵味方の区別は出来ないから、なるべく俺を先頭にしてくれ」 「わかった。一番槍は任せるよ。無茶はしないようにね」 コクリと頷いた少年の横顔を、央歌は伏しがちな目で見上げた。強い人だな、と思う。 「……?」 視線を感じたのか、七雄が央歌を見やった。 正面から見詰め合うことになって央歌はびくりと身体を震わせるが……すぐに、首をかしげる。 真っ直ぐに見つめ返されるか、それとも見下されるかと思っていたというのに、 (……弱い?) 七雄の瞳は、何かに怯えるように揺らいでいるように見えた。 先に目を逸らしたのも、七雄だった。 違和感。 たとえ勇敢な人間でも、その目付きまで常に荒ぶっているわけではないだろう。 だが、今の少年の目はそれとはまったく正反対の感情を浮かべていた。 (私を、怖がって、た?) 何故という疑問と共に感じたのは、 (私と、同じ?) 周囲の人間に怯えた目を向ける、奇妙な親近感だった。 to be continued... トップに戻る 作品投稿場所に戻る
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シリーズ概要 双葉学園の旧校舎に現れるといわれるコンジキグモの噂話。 悪魔と魂を共有する魔術師の少年逢馬空と黄金蜘蛛ゴルトシュピーネの物語。 シリーズ作品 【金色蜘蛛と逢魔の空 】 【金色蜘蛛と逢魔の空 2 】 【金色蜘蛛と逢魔の空 第二話 1】 【金色蜘蛛と逢魔の空 第二話 2】 主な登場人物 逢馬 空 作者コメント なにかあればどうぞ 戻る
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一般的な質問「レッツバトルオンライン」ってどんなゲーム? 「レッツバトルオンライン」をプレイできるプラットフォームは? 「レッツバトルオンライン」をソロで遊ぶことはできる? ゲーム全般とりあえず初めてみたけど何すればいい? 操作方法を詳しく アイテムの装備の仕方がわからない 装備したけど対戦で装備が変わらない 対戦中ずっと同じ装備のままなんだけど ジャンプできないの? 後ろに下がれないの? MPって何? アイテム強化したいんだけど wikiに載ってるアイテムデータのパラメータが低い 敵との火力が違いすぎるor遠距離攻撃にボコボコにされる キャラクターからエフェクト出てダメージ食らってる マルチプレイ関連友達と一緒にプレイしたい マルチバトルの味方に攻撃当たる? 相手の攻撃がプレイヤーに当たっても消えない その他スキンやエモートが欲しい セーブデータを移動したい 一般的な質問 「レッツバトルオンライン」ってどんなゲーム? 基本無料の横スクロールのオンライン対戦ゲームです。 1体1で戦うシングルバトルと、2対2で戦うマルチバトルがあります。 「レッツバトルオンライン」をプレイできるプラットフォームは? Windows・Android・iOSでプレイ可能です。 クロスプレイに対応しており、どのプラットフォームの人ととも対戦できます。 「レッツバトルオンライン」をソロで遊ぶことはできる? オンライン対戦専用ゲームなので出来ません。 ゲーム全般 とりあえず初めてみたけど何すればいい? チュートリアルで貰ったレアチケット5枚でレアガシャを引きましょう。 手に入れたアイテムを装備して対戦しましょう。 対戦→コインが溜まる→ガシャを引いてアイテムGET→対戦→コインが溜まる… の繰り返しです。 操作方法を詳しく PC版 Q ダッシュ W ウエポン1 E ウエポン2 R スペシャル1 T スペシャル2 Esc ゲーム終了(タイトル画面のみ) スマホ版 左ボタン ダッシュ 右ボタン それぞれウエポンとスペシャル アイテムの装備の仕方がわからない まず中央上のタブから、装備したいアイテムを見つけます。 その後、アイテムのアイコンを装備する枠にスワイプします。 装備したけど対戦で装備が変わらない 編集したカスタムが間違っているか、バトルに使うカスタムが違うかもしれません。 アイテムの装備は「カスタムセット」に表示中のカスタムを編集しています。 編集したいカスタムが「カスタムセット」と合ってるか確認しましょう。 あるいは、「セットセレクト」に編集したカスタムが入ってないかもしれません。 バトルは「セットセレクト」に表示中のカスタムで戦います。 対戦中ずっと同じ装備のままなんだけど 自分が負ける(ステージから落ちるorHPが0)にならない限り、同じカスタムのまま戦います。 負けると次のカスタムを使用し、すべてのカスタムで負けるとバトルの敗北になります。 バトル中どのカスタムを使用しているかは画面の上の両端に表示されています。 ジャンプできないの? バトル前は出来ますが、バトル中は出来ません。スペシャルの「ジャンプ」を使用すれば出来ます。 後ろに下がれないの? 下がれません。一部攻撃は、攻撃中に少し後ろに下がれます。 MPって何? 対戦すると貰えます。一定数溜まるとチケットなどのアイテムがもらえます。 シーズンMPは期間限定のMPで、報酬が豪華なようです。 アイテム強化したいんだけど 「強化」はバトル終了時に一定確率で強化されます。 「限界突破」は、ガシャで被ると強化されます。 もしくは、アイテムアイコンをタップ→アイテムの説明画面の強化を押すと、チケットを使い強化できます。 強化Max状態(強化Lv10・限界突破Lv3)だと、アイテムのアイコン右下に「Max」と表示されます。 wikiに載ってるアイテムデータのパラメータが低い 当wikiに載っているデータは強化前のパラメータです。 強化すると、HP・攻撃力・防御力・精神力・命中力・回避力・運・空きスロットが強化されます。 強化Max状態では、パラメータが1.5倍になります。 敵との火力が違いすぎるor遠距離攻撃にボコボコにされる 性能が高いアイテムはウェイトが重い(移動が鈍い)傾向にあるので、ダッシュで体当たりするとあっさり落とせるかもしれません。 キャラクターからエフェクト出てダメージ食らってる 状態異常になった可能性があります。 状態異常一覧はこちら マルチプレイ関連 友達と一緒にプレイしたい 「あいことばで遊ぶ」で同じワードで入室したら出来ます。 マルチバトルの味方に攻撃当たる? 当たりません。アイスウォールなどのバリアも味方には影響がありません。 相手の攻撃がプレイヤーに当たっても消えない 敵のアイテムに「貫通」がついている場合消えません その他 スキンやエモートが欲しい プレミアムパックの購入特典か、MPの特典に含まれてます。 MPはバトルすると上がります セーブデータを移動したい 装備セレクト画面(タイトル右)の右上の人のアイコンから引継ぎ処理ができます。 自動でアップロードされないので、端末の移動の際は必ず引継ぎ処理をしてください
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シルバーナイト ラムソン率いるファルシスタ騎士団の主力部隊。 能力は全体的に高めだが、土魔法に弱いのがネック。 平原で相手にすると結構鬱陶しい。 -- 名無しさん (2009-02-02 16 39 57) 相手が土魔法を使えず、舞台が平原であれば無類の強さを発揮する。 逆に言えば、条件が揃わないとかなり使いづらいほうとも言える。 機動力が高く、間接攻撃手段も持ち合わせるので、土魔法で楽勝なんて思っていると 急接近されてシャーマンが討ち取られるので注意は怠らないようにしよう。 -- 名無しさん (2009-02-06 23 44 16) 中世の騎士というよりは近世以降の軽騎兵に近い。平地では無敵。 -- 名無しさん (2009-03-11 05 16 07) 相手がシルバーナイトばっかりだったので、 魔力ドーピング後のアースクウェイクで一撃だろうと魔法使い系ばかりを攻め込ませたら 1ターンで接近されてあっという間にボコボコにされたのはいい思い出 -- 名無しさん (2010-12-29 03 05 40) 素の能力自体は高めなので、投げ槍乱舞がうっとおしく感じてもうかつに直接攻撃を仕掛けるのは危険 下手すると一気に瀕死にまで削られる -- 名無しさん (2010-12-29 18 20 30) Yahoo!ジオシティーズのサービス終了により入手不可となりました。 -- 名無しさん (2022-05-05 11 24 50) 名前 コメント
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ツンデレでヤンデレな幼馴染み小鳥遊双葉さんとHなことをするゲーム 430 :名無したちの午後:2008/08/30(土) 21 18 01 ID TQIU/36C0 ツンデレで~双葉さんと~以下略、プレイ中。 ヒロイン3で、手コキ足コキ素股で亀頭ナデ等色々ある。 紫のヒロインがかわええ。 関連レス
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たしかに 概要 6代目接続詞の民 DB親衛隊の1人。定期的に髪色が変わる。 始祖ユミルになれる。 公園で小学生12人に売られた喧嘩を買ってボコボコにされた。 最近LINEを何者かに乗っ取られた。(不憫) 誰からも頼りにされるしっかり者だが笑うとバブ味があり非常にかわちい。 部員からは色々な呼び名で呼ばれている。 めるモのおとぼけ顔のモノマネができる、なんか似てる。 現実を生きるプーさんのモノマネが得意。
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怪物記 第七話 ラノで読む 怪物記 こら、罪人ども。この蜘蛛の糸は己のものだぞ。 お前たちは一体誰に尋いて、のぼって来た。下りろ。下りろ。 ――蜘蛛の糸 ・・・・・・ 別れ谷、そう呼ばれる渓谷が西日本に存在する。 元々は一座の岩山だったが地殻変動で別たれ、谷となった。そんな経緯でできたために別れ谷の名称で呼ばれている。 別れ谷は枯れ谷であり、底に川は流れておらず木も植生していない。草食の動物は一匹たりとも生息していない。逆に別れ谷の周囲、東の不倒山、西の爬蔵森、北の垂芽川《たるめがわ》は水も豊富で多くの生物が棲家としている。 だが、別れ谷にも生物はいる。 別れ谷はこの日本においてある一系統のラルヴァの中心地だ。 そのラルヴァの系統は蜘蛛。 四対八足を持ち昆虫の定義より外れ、糸を吐き、巣を構えて獲物を捕らえ捕食する生物。別れ谷は日本の蜘蛛型ラルヴァの聖地なのだ。 そして別れ谷が蜘蛛型ラルヴァの聖地である理由は、そこに蜘蛛型ラルヴァの王が棲むからである。 別れ谷に君臨する蜘蛛の王は名を――【女王蜘蛛】という。 第七話 【女王蜘蛛】 ・OTHER SIDE 蜘蛛型ラルヴァの総本山である別れ谷の南には網里町という小さな町があった。 六十年ほど前に別れ谷に蜘蛛型ラルヴァが数知れず群生していることが分かったときにはもう網里町はあったが蜘蛛の主である女王蜘蛛は人間に友好的であり、蜘蛛型ラルヴァが町を襲うことも無く、結果として別れ谷は放置された。 均衡が崩れる事件が発生したのは三日前。 突如として網里町を蜘蛛の軍団が襲い、町の住民を一人残らず連れ去った。 蜘蛛の聖地が聖地たる由縁である女王蜘蛛の儀式に必要な生贄とするために。 女王蜘蛛が子を生むための糧とするために。 かくして別れ谷一帯は住民を救出しようとする人間と女王蜘蛛を防衛する蜘蛛の戦場となった。 双葉学園は戦闘可能なレベルに達している学生を多数動員し、国内の他の異能力者組織や組織に所属しないフリーランサーとも連携して事態の解決に当たった。 しかし、作戦の立案は困難を極めた。 空爆や空中からの戦闘員投下は雲と地上の間に鋼糸で巣を張る巨大蜘蛛【天蜘蛛】の結界によって不可能。 空間移動能力者では送れる戦闘員に限りがあり、戦力を漸次投入すれば各個撃破される恐れがある。 試行錯誤の結果、ある作戦が決行された。 真っ向勝負。東西南北四方からの包囲制圧作戦である。 東――不倒山 仰々しい名前に反して美しい景色に恵まれ、平時は一般の登山客も多い不倒山。 その不倒山も今日この日ばかりは日本で最も戦火の激しい地帯となっていた。 「こちら伝馬! 地面からでけえのやちいせえのがうじゃうじゃ出てきやがった!」 通信機モバイルを片手に伝馬京介が叫ぶ。 彼の前方、山の斜面には山肌を埋め尽くさんばかりに蜘蛛の群れが次々と土中から姿を現していた。 「馬鹿、大きい小さいだけじゃわからないだろ。だからラルヴァのデータを予習しておけと言ったんだ。 こちら不倒山方面部隊氷浦より作戦指揮所に連絡、不倒山には【鬼蜘蛛】と【土蜘蛛】を中心とした蜘蛛型ラルヴァが多数展開しています。その数、目測で凡そ千」 それら全ての蜘蛛が、別れ谷を目指して行軍していた異能力者達に襲い掛かってくる。 「質は決して負けていませんし学園生とフリーランサー、他の異能組織との連携でこちらも百人近くはいますが、物量に差があるため突破は困難です。不倒山方面部隊は別れ谷への到着が遅れます」 「クソッ! こんな蜘蛛の子軍団なんざ俺が蹴散らしてやる!」 京介が両足に魂源力を集中、赤い脚部鎧を掃討戦仕様で展開。 絨毯の如く侵攻してくる蜘蛛の群れの一角を切り裂くように一直線に駆け抜け、進路上の土蜘蛛を十五体纏めて爆砕する。 同行する異能力者からと感嘆の声が上がるが、すぐさまその穴を補充するように土中から新たな土蜘蛛が現れる。 「お前は成人異能力者と連携して鬼蜘蛛をやれ! 土蜘蛛は僕と他の学生で叩く!」 自身とチームメンバーである姫川哀へと迫ってきた土蜘蛛を氷浦宗麻が異能で押し止め、洋剣でバラバラに切断する。 「あー、木刀が体液でぐしょぐしょっす……てかこないだも虫退治したばっかりなのにまた虫退治っす」 近くでは神楽二礼が木刀で土蜘蛛の頭を叩き潰し、 「このまえ俺が倒した土蜘蛛よりも何回りか小さいな。防衛に数が必要になって成長しきってないのまで出してきたってことか? けど手加減はしないぜ、ガナル・クロー!」 赤きパワーストーン、カーネリアンで全身を包んだ戦士、木山仁ことガナリオンは両手から生やしたモース硬度7の爪で次々と土蜘蛛を切り裂く。 「姫川さんは鬼蜘蛛以上の大物が出てきたときに備えてください」 「うん……!」 不倒山での軍団戦闘が始まった。 西――爬蔵森 「うー、このもり、クモ男くさいねー」 アクリス・ナイトメアはそう言って鼻を押さえていた。 「どんな匂いですの!? そもそもどんな鼻してますの!? それと気が散るからぷるんぷるんと胸を揺らさないでいただきたいですわアクリスさん!」 パーティ『クルセイダー』のリーダーである甘利がつっこみを入れ、その後ろでは堂下大丞が不安そうな顔で彼の所属するパーティ『ダイアンサス』のリーダーである坂上撫子の顔を見る。 「撫子先輩、やっぱり……」 「だろうな。相手に少しでも知能があれば、ここに兵を配するだろう……来るぞ!」 撫子の警告の直後、空が見えないほどに広がっている木々の枝を揺らし、ラルヴァが彼らの前に姿を現す。 『キキッ、キキ!』 そのラルヴァは蜘蛛の頭と小さく猫背だが人型の体をもっていた。 「本当にクモ男が出てきましたわ!?」 「ユリ、これは」 「【蜘蛛猿】、猿のしなやかさと蜘蛛の糸と毒を使って集団で狩りをするえげつないラルヴァね」 「たしかに……」 蜘蛛猿は異能力者達を樹上から囲むような形で配置についていた。 戦闘を開始した瞬間、一斉に糸と毒を吐きかける包囲陣形だ。 「おい、蜘蛛が出たぞ。合体したらどうだ?」 「馬鹿言え。蜘蛛は昆虫じゃない。それより半分猿なんだしお前が合体したらどうだ?」 「断る! 今日は折角犬を連れて来ているしな!」 「俺だって今回はバッタを連れて来てるんだ!」 共に生物との合体変身を異能とする二階堂志郎と二階堂悟郎は互いの合体相手を手に持ちながらエヘンと胸を張り合った。 「そんなことよりこの数は……」 「ひゃくよりいっぱいいるよー。鳴き声たくさん、ほかにもいっぱいいるねー」 「こちらはダイアンサス、クルセイダーを中心に計四十七人。数の上では半分ほど……」 「なら、負けませんわね」 「そういうことだ」 撫子と甘利が不敵な笑みを浮かべると各員が戦闘態勢をとる。 「『我、命ず』――『殲滅せよ!』」 アクリスが詠唱によって自らのリミッターを解除し、 「「合体変身!!」」 二階堂兄弟がそれぞれの連れていた生物との合体で緑色のバッタ男と青い犬男に変身し、 「いくぞ!」 撫子が右手に敵を一撃切断する桃色の爪を形成した。 その瞬間、脅威を感じ取った蜘蛛猿が糸と毒を吐く。 だが蜘蛛猿の攻撃は結界能力者の張った結界に阻まれ、 結界が張られる直前に飛び出したアクリスの拳が、志郎のキックが、悟郎の剣が、撫子の爪が、四匹の蜘蛛猿を瞬く間に粉砕する。 「戦闘開始!」 南――網里町 四方からのルートにはもちろん網里町からのルートも含まれていた。 むしろこのルートこそは車両による兵員輸送が可能な舗装された道と蜘蛛型ラルヴァが展開しづらい平坦な地形であることを考慮し、四つの中では最も突破確率が高いルートとされ、自衛隊などの非異能力者も含めて最も多くの人員を投入していた。 だが、 「は、ハンドルが利かない……!?」 市街に進入して間もなく全ての自衛隊車両がその制御を失い迷走し始めた。 ある車両は本来の最高速度を上回る速度で壁に激突し、ある車両は縦に何度も回転し、またある車両は河川に沈んだ。 同伴した自衛隊はほぼ全滅状態だった 「どうなってんだ、こいつは?」 僅かに残った無事な車両――対異能コーティングが施されたジープを運転していた上尾慶介は怪訝そうに呟いた。 「電子機械のコントロールか? 違う、むしろ車輪に何か細工されたみたいだったな」 まるで、車輪の“回転”そのものをどうにかされてしまったような。 「上尾さん! 無事ですか?」 停車した彼のジープに五人の人影が近づく。身体強化特化パーティ、久留間戦隊だ。 「お、久留間か。お前らのほかに無事な連中は?」 「異能力者組は負傷者も出ましたけどまだいけます。でも自衛隊の方はさっきの攻撃で死傷者が多すぎて……」 「攻撃? やっぱこいつはラルヴァが仕掛けてきた攻撃か?」 上尾の質問に久留間はゆっくり首を振って否定する。 「これはラルヴァの攻撃じゃありません、この攻撃を仕掛けてきたのは……」 「――俺やなあ」 軽い関西弁が聞こえた直後、彼らの前方から巨大な車輪が高速で転がってくる。 否、それは車輪ではない。それは――水車だった。 「なっ!?」 数秒で眼前に迫ってきた水車を上尾はジープを急発進させ辛うじて回避する。 しかし、水車はすぐさまUターンして後方から追ってくる。 「久留間戦隊、アタック!」 久留間の号令を受け久留間戦隊のメンバーが四方から水車を攻撃し一人一撃の計四撃で高速回転する水車を木っ端微塵に砕く。 「はぁん? なんや、御付きの人らも結構強いやないか」 水車を砕かれて声の主が姿を現す。 目元まで隠れたニット帽と、複数の金属ディスクをぶら下げたジャケット、背中にギターケースを背負った大道芸人か何かにしか見えない男。 今の水車による攻撃と、自衛隊の部隊を壊滅させた張本人。 “聖痕《スティグマ》”の工作員、回転する黄金軸《スピニング・スピンドル》のスピンドル。 「やっぱりあなたですか。でも、どうして?」 「そら俺らはラルヴァ信仰の“聖痕”やからな。ラルヴァを護るために働くこともあるわ」 建物の陰から数人の人影が姿を現す。 いずれも“聖痕”の構成員、戦闘型異能力者だ。 「で、どうするんや? 俺らは人間相手のドンパチ慣れとるけどあんたらはそうやないやろ。蜘蛛の前に俺らと戦うか?」 スピンドルは尋ねつつ、自らの魂源力を彼女らのすぐ傍のマンホールの蓋に浸透させる。 スピンドルの魂源力と回転指令を受け取った蓋は高速で回転し、ジープの後部座席に搭乗した女子生徒の頭部へと跳ね飛ぶ。 マンホールの蓋が人の頭部など軽く粉砕する速度と重量で彼女に迫り、 「或遇悪羅刹 毒龍諸鬼等 念彼観音力 時悉不敢害」 見えない壁――結界に弾き飛ばされた。 不意打ちを防がれ僅かに眉を顰めたスピンドルに笑みを含めた声がかけられる。 「戦うかですって? そんなのはじめから決まってるわ」 その声は上尾のジープの後部座席から発せられた。 上尾慶介は本来Team.KAMIOと呼ばれるパーティのリーダーであり、普段彼が運転するジープにはパーティメンバーである炎輪使い、サイコキノ、氷結能力者の少女たちが同乗している。 しかしこの作戦にあたり、彼は普段のメンバーではなく他の異能力者を乗せる役目を担っていた。彼がジープに乗せ、ここまで運んできた異能力者とは 「対人戦闘喜んで♪」 かつて醒徒会に反旗を翻したテロリスト。 黒井揚羽と九十九唯の二人である。 「は?」 揚羽の返答にスピンドルが疑問符を浮かべるより早く揚羽が髪を風に流すと、その髪から奇妙な光の粒子が放たれた。 スピンドルは自らに迫る光の粒子に悪寒を覚え、回避する。 直後、スピンドルの後方にあった樹木が一瞬で枯れ、凍り、崩壊していった。 「……これ、当たったら死ぬんちゃうかな?」 黒井揚羽の異能『モルフォ蝶の燐粉』。 その古代蝶の燐粉は電子機器を狂わせ、触れた者の水分を完全に奪い去り気化冷却により凍てつかせ崩壊させる。 無論、生身の人間に使えば必殺となる攻撃である。 「条件付きってのは気に入らないけれど、能力の制限も解除されて久々の大暴れよ。“聖痕”ってところにも私達の力を見せ付けてあげるわ♪」 「頑張ろうね揚羽ちゃん!」 そして彼女たちはノリノリで必殺を人間に使う気である。 「じゃあ、あたしたちもやろうか」 「「「「了解」」」」 揚羽らに加え、久留間戦隊も戦闘に加わる。 さらには、 「危ねーわね。危うく星条旗じゃなくて日の丸の車の中で死ぬとこだったわ。でも流石に頑丈だわね、日本車」 横転した自衛隊車両のドアを蹴り破るカウボーイブーツ。 車中の少女はその勢いのままクルリと回るように飛び出し、金髪のツインテールを揺らして地面に立つ。 そして眼前の“聖痕”の構成員を睥睨しながらこう言った。 「で? やったのどいつ?」 双葉学園きっての対人戦エキスパート。銃の風紀委員長、山口・デリンジャー・慧海――デンジャーが参戦した。 「……俺、信仰心薄いほうやけどあんたらに比べたらラルヴァが神様に見えるわ」 愛用の銃を握った彼女の笑みは、ひどく邪悪だった。 かくして網里町では一方的な戦いが始まった。 別れ谷――上空 天蜘蛛はジャンボ旅客機に倍する巨体をもつ蜘蛛型最大のラルヴァである。 普段は雲の中に棲み空気中の水分を食んで生きているが、体の維持に必要である動物性タンパク質が欠乏すると雲と地上の間に結界とも言える魂源力を帯びた鋼糸の巣を張り、大小の鳥類、ラルヴァ、果ては飛行機を捕らえて捕食する。 どのようにしてその巨体を雲の中に置き続けているのか、雲と地上の間にどうやって巣を張るのか、生態に謎の多いラルヴァであるが今の問題はその生態ではない。 天蜘蛛が別れ谷の上空から別れ谷の周囲を囲う蜘蛛の巣状の結界を張っていることが問題だった。これではヘリなどでの輸送はできず、住民を連れて脱出しようとしても上空の天蜘蛛が見逃さないだろう。 救出作戦を成功させるために天蜘蛛の排除は必須条件だった。 初めは自衛隊の地対空誘導ミサイルと遠距離砲撃型の異能力者による攻撃がなされた。しかしどちらも鋼糸結界に阻まれ天蜘蛛本体には攻撃が届かず、失敗。 次いで自衛隊のF35―ライトニングⅡによる近接攻撃が試みられたが、失敗した。 だが、結界に接近したF35のパイロットの証言が一筋の光明をもたらした。 証言によれば天蜘蛛の鋼糸結界には人間大の隙間がいくつも開いていたという。 つまり、飛行能力をもつ異能力者ならば鋼糸結界の中に潜り込み、天蜘蛛本体を攻撃できる。 双葉学園は臨時の空戦部隊を組織し対天蜘蛛攻略作戦を開始した。 まるで飛行機雲のように空に十色の光のラインが曳かれる。 それは“魔女”の箒の先から流れる魂源力の光だ。 ――魔女。数少ない飛行能力者にして特定のアイテム・箒を使うことで天空を翔ける少女たち。彼女らはその箒に自身とパートナーであるガンナー、あるいは“乗客”を乗せ、別れ谷上空を我が物とする天蜘蛛へと向かっていた。 双葉学園の魔女式航空研究部、通称『魔女研』の十五人の魔女のうち、別れ谷に派遣されたのは十名。加えて五名のガンナーだ。メンバーは新米魔女とガンナーのチームが五つ、そして先輩の魔女が五人。 魔女研の部長をはじめとした四人の魔女は今も学園の防空を担当しており、副部長である柊キリエは先日の戦闘による負傷からまだ復帰していない。 「こちらガンナーレッド。モバイルの表示だと鋼糸結界到達まであと二分です」 それらの事情からこの作戦における現場指揮官となったガンナーレッド、久世空太が作戦指揮所にいるキリエに報告する。 『了解した。 みんな、聞いてほしい。今回の相手は君達がこれまで戦ってきたラルヴァの中では最も巨大で、強大だ。 同時に、最も遅い。【コルウス】のような翼はなく、飛ぶこともできない。分厚い結界に護られて空からぶら下がっているだけだ。そんなものに空を占領させ続けるわけにはいかない。 そして、君達ならたとえどれだけ巨大でもそんなものには負けない。そうだろう?』 「はい!」 キリエの言葉に赤い魔女、瀬野葉月が答える。他の魔女やガンナーも一様に力強く肯く。 そして彼女らは鋼糸結界の隙間を潜り抜け、天蜘蛛との戦闘に突入する。 同時に、先輩魔女の箒に跨っていた乗客が箒から飛び降りる。 「ただ垂直に宇宙を目指して飛べばいいのとは違って空を高速で飛びまわるのは重力のせいでちょっとやりづらいからな。運んでくれて助かったよ」 宙間戦闘能力を有するサイコキノ、一番星ヒカル。 「お陰で変身時間をフルに使える! いくぞシュン! 合体変身!!」 鳥類との合体変身能力者にして二階堂兄弟の次男、二階堂待郎。 彼らに続いて双葉学園の生徒や他組織の異能力者が箒から飛び立ち、天蜘蛛に攻撃を開始する。 対する天蜘蛛も巨大な脚を振り回し、鋼糸をばら撒いて迎撃する。 別れ谷上空での激闘が始まった。 最南方――作戦指揮所 網里町の入り口よりさらに1キロほど南に軍用テント――別れ谷作戦の指揮所が設営されていた。 本来ならば別れ谷の女王蜘蛛を監視するための施設が網里町の中にあったのだが、そこは蜘蛛型ラルヴァの襲撃と同時に壊滅している。その代用に急ごしらえした作戦指揮所がこの軍用テントだった。 軍用テントは普通のテントとは比べるべくもないサイズではあるが、複数の端末や計器が並んでいるので随分手狭になっている。情報の整理に当たっている担当員たちもどこか窮屈そうにしている。 先ほどから作戦指揮所には多くの情報がもたらされており、それらの情報は東西南、そして上空での戦闘に関するものだ。 「状況はどこも膠着しているようね」 「はい」 指揮所に置かれた作戦デスクの傍で生徒ではない、二人の成人女性――双葉学園の生徒課長の都治倉と教師の春奈・C・クラウディウスが言葉を交わす。 「今回は多くの人命がかかっているから自衛隊も協力的だけど、それでも上手くはいかないものね」 「東は幼体まで投入した数で防衛する作戦のようですからどうしても手間取りますし、西は地形を利用したゲリラ戦を仕掛けられてます。上空の敵は天蜘蛛だけですけどかなりの大型ラルヴァですから手こずってるみたいです。それに南には“聖痕”が介入を……」 「何とかなるでしょう。あの娘に加えて先日の事件で醒徒会と五分に戦った七人のうちの二人、おまけに久留間戦隊もついているんだから」 「そうですね。けど、あたしの能力が使えればそこを突破口にできるかもしれないのに……」 春奈の視線は作戦デスク上の地図に描かれた不倒山に向けられている。そこには彼女が受けもっている高等部1Bの生徒が多く参加していた。 「駄目よ。あなたの役目はいずれかの部隊が防衛網を突破した後にあるわ」 春奈は対ラルヴァ用イージスシステムとも言うべき異能の持ち主であるが、現在はある事情からその異能『ザ・ダイアモンド』を温存させられていた。 「わかってます、今は心配することしかできないんですね……」 春奈は堪えるように下唇を噛んだ。 彼女たちが話している間にも戦況は少しずつ動いている。 数の不利、サイズの不利はあったが全ての戦線で五分以上の状態を保っている。しかし、五分から大きく動くこともない。決して負けてはいないが押し切れもしない。 ただ、一ヶ所を除いては。 「……?」 指揮所の学園生スタッフの一人であり、ラルヴァ限定の神眼ともいえる異能『位相界の眼』を使い、ラルヴァの位置情報を見ていた覘弥乃里は北の垂芽川のラルヴァ反応がおかしいことに気づいた。弥乃里から情報を受け取り処理していた四方山智佳もまたそれに気づく。 「それにしても、つい最近北海道で蟲型が大量発生したばかりなのにここでもまたこれだけの数が出るなんてね。その前には時留蜻蛉の事件もあったし、ここまで大きな騒動が続くといい加減疲れてくるわ」 「このまま規模が大きくなったらいずれ ワンオフ が出てくるかもしれませんね」 「歳之瀬先生みたいなこと言わないで。もしも」 「北、垂芽川付近のラルヴァに動きがありました」 都治倉と春奈の会話は止め、『位相界の眼』が感知したラルヴァの反応を映すモニターへと目を向ける。 そこにはほんの一分前まで二百近いラルヴァの反応があったが、今は唯の一つしか光点は映ってなかった。 北――垂芽川 垂芽川は北にある湖を水源とし南へと流れ、別れ谷の手前で東西に分かれ東の不倒山の麓と西の爬蔵森の中を通り、二本の分流は下流の網里町付近でまた一つになって海へと流れていく。 上空から見るとちょうど垂芽川が別れ谷を囲う地形になっている。 源流である北の垂芽川の川幅はおよそ百メートル。 フナやコイなどの魚類が多数生息していたが、事件が起こってからはその生態系も一変している。 アメンボの如く水上を滑る水蜘蛛など水場での戦闘に特化した蜘蛛型ラルヴァの配置が確認され、水中戦を強いられれば苦戦は避けられないと考えられていた。 だが、 「川が……ありませんね」 双葉学園醒徒会の副会長である水分理緒は目の前の光景を見て困ったように頬に手を当て、首を傾げた。 彼女は今回の作戦において動員された二人の醒徒会役員の一人だった。彼女の役目は水をコントロールする異能を駆使しての水棲ラルヴァの全滅。さらには垂芽川を一時的に割り、あたかもモーゼの奇跡のように異能力者部隊に垂芽川を通過させることだった。 しかし、当の垂芽川は消失しており、川が流れているはずの場所には代わりに ――半径1キロほどの原生林が広がっていた。 「なんで川が森になってんのよ? そりゃ水の中に入らなくて済んだのはいいけど、いくらなんでもおかしいわよ」 「この地図不良品? 図書券もらえるかしら」 垂芽川方面部隊のメンバーもあまりに前情報と違う風景に疑問を抱いている。まさか川が森になっているなどという状況は想定外でどう対処すべきかもわからなかった。 「作戦指揮所へ、聞こえますか? 垂芽川方面部隊の水分です。 垂芽川に到着したのですけど、なぜか川がなくなって森になってるんです。ラルヴァの姿も見当たりません」 『こっちでもラルヴァの消失は確認しました。ところで水分さん、森ってなんですか?』 「その、まるで南米かどこかのジャングルにしか見えない森が川の代わりにあるんです」 水分はそう言ったが川は流れている。ただし、上流から原生林に流れ込んだまま決して、下流に流れてこないのだ。 『ジャングル……智佳さん、少し調べて欲しいのだけど』 『もう調べてあります。三分前にナンバー59の監視エリアからナンバー59が消失。垂芽川付近の衛星写真と監視画像で原生林を比較、98.62%一致しました』 『そんな……!?』 「先生?」 指揮所の動揺が通信モバイルから伝わってくる。この森に……何かあるのか。 『水分さん、単刀直入に言います。垂芽川方面部隊は作戦を中止して撤退してください』 「ですが……」 『その森を刺激しないで撤退して!』 森を刺激するなと春奈は言った。 だが、その忠告は遅きに失した。 何十人という異能力者、それだけの魂源力が近づくこと自体が既に森を刺激していた。 ここに集まっていた二百体の蜘蛛型ラルヴァのように。 「この音、なに?」 「……獣か?」 「動物が吼えているみたい……」 それまでは静寂そのものだった眼前の森の中から、唐突に無数の野獣の鳴き声が轟く。 『感あり! 森の中にラルヴァの反応……一万、二万……さらに増加中!』 『生存に必要な生活圏が明らかにあの森の面積を超えているわ。やっぱり学説どおりあの森は見かけだけの入り口で内側に異空間でもあるのかしら。何にしろ……、あれの口が今開いた』 『水分さん!!』 人々の驚愕を嘲笑うかのようにさらなる超常現象が起きる。 森が――動き出した。 ゆっくりと歩くような速さで水分らへと近寄ってくる。 その森の中には、昼間だというのに幾つもの獣の眼が赤く輝いている。 餌が森に放り込まれるのを待っているかのように。 「そういうことですか。川は……そこにいた蜘蛛ごと飲み干されてしまったのですね」 得心したように、されどかすかに苦い顔をして水分はため息をついた。 「水の中の方がマシ、だったかもね」 「副会長。この森はまさか……」 「―― ワンオフ 」 カテゴリービースト中級Cノ3 ワンオフ 登録番号LⅨ――【武装森林《グルジオラス》】 ある一点をターミナルとしながら、空間移動で世界中を不定期に移動する旅する大地。かのエンブリオ同様に無数のビーストラルヴァを内包する――環境型ラルヴァである。 グルジオラスは垂芽川の水流・霊脈に混ざった水棲の蜘蛛型ラルヴァの大量の魂源力を感知し、自らと内部のラルヴァの腹を軽く満たすために二百体の蜘蛛型ラルヴァを捕食すべくこの垂芽川に出現したのだった。 そして、グルジオラスは次なるターゲットを自らに近づいてきた人間たちに定めた。 「……作戦指揮所へ、わたしたちはこれからグルジオラスを引きつけてここから離脱します」 『!』 「このままここにグルジオラスを放置すれば最悪別れ谷に向かいます。そうなれば……別れ谷に捕らわれている人々の命が危険にさらされてしまうでしょう。 ですから、わたしたちがグルジオラスを引きつけて別の安全な地帯へ誘導します」 『待って! 水分さ』 水分は手にしていた通信モバイルの電源を落とし、作戦指揮所からの返答を遮った。 「……すみません、勝手に決めてしまって」 彼女は部隊のメンバーに向き直り、頭を下げた。 ほとんど彼女の一存で部隊全体を危険にさらす決断を下してしまった形だが、部隊のメンバーにそれを非難する様子は無かった。 「ま、仕方ないわよ。ただ逃げるよりは随分ましな選択だわ」 「そうね。それに、もう目をつけられたみたいだし」 他のメンバーも口々に言葉を発するが、いずれも水分の決断を肯定するものだった。 「みなさん……」 「で、どっちに誘導するの副会長?」 「北へ向かいましょう。あの場所に辿りつければ勝算はあります」 「OK。ちょっとした遠足になりそうね。けど」 「ただ引き付けるだけでは済まないようだ」 「らしいわね」 メンバーの一人の女子生徒がその身体の一部、爪を猫のそれのように伸ばし水分の右方の空間を貫いた。 さらに一人の男子生徒が硬質化した拳を左方の空間に叩きつけ、また別の女子生徒が水分の後方に火柱を巻き起こす。 そして、三方から水分を狙っていたビーストラルヴァは刺殺・殴殺・焼殺されて息絶えた。 「少し、激しい運動をすることになりそうですね」 否、四方。真上から水分を狙っていた鳥型ラルヴァは水分の放った水弾で撃墜されている。 部隊のメンバーはビーストラルヴァの出所、グルジオラスへと目を向ける。 視線の先では……グルジオラスの中のビーストラルヴァが少しずつ森の外へと姿を現し始めていた。 最南方――作戦指揮所 指揮所は重苦しい空気に包まれていた。 ワンオフ との遭遇。それがどれほどの事態か真に理解している者は半数といなかったが、理解した半数の表情と水分との通信の途絶が知らぬ者にも深刻さを伝えていた。 その中で、春奈は作戦デスクの上の地図を凝視していた。 (グルジオラスは足が速いラルヴァじゃない。誘導しながらの防御戦闘に徹すれば、水分さんなら大丈夫……) 別れ谷の北では水分達がグルジオラスと戦っている。東でも、西でも、南でも、空でも、双葉学園の学生達が、彼女の教え子達が必死に戦っている。教師である自分がただ心配するだけでいいわけがない。自分がすべきは――。 「水分さんのおかげで北の障害は消えました。那美さん、突入部隊の準備はできてますか?」 「できてるわよ」 春奈の問い掛けに春奈と同じく双葉学園の有する数少ない成人異能力者の一人であり一級の戦闘系異能力者である難波那美が答えた。 突入部隊。それがこの二段構えの別れ谷作戦の二段目だ。 東西南北から攻め入ると同時に、制空権を奪っている天蜘蛛を空戦部隊が攻撃。 五方のいずれかに穴が開いたならそこから六番目の部隊、突入部隊が方面部隊の残存戦力と共に別れ谷に突入。人質の救出を行うと同時に、首魁である女王蜘蛛を討滅する。 春奈の役割は完全に相手のテリトリーであり、最も苦戦を強いられるであろう別れ谷の内部で突入部隊の指揮を取ること。彼女の能力があれば相手のテリトリーの中であろうと五分で戦える。 「私とミナに、時坂君、皆槻さん、結城さん、八島さん、伊万里さん、龍河君とあなた、それに外部のフリーランサーを加えた計十人。これが突入部隊のメンバーよ」 双葉学園の中でも戦闘能力に特化した『荒神の左手』の那美とミナ、永劫機メフィストフェレスのマスター時坂祥吾、『ワールウィンド』の皆槻直、生徒会役員の一人である龍河弾。治癒能力『ペインブースト』の結城宮子。攻撃と治癒双方の能力を発揮できる八島キョウカ。周囲の人間に迫る死の危険を察知できる『アウト・フラッグス』の巣鴨伊万里。そして対ラルヴァイージスシステムとも言うべき指揮能力『ザ・ダイアモンド』の春奈。 彼女らが双葉学園の選出した別れ谷内部への突入メンバーだった。 「北の部隊と合流することはできません。けど、今を逃せば防衛網が復活するかもしれません。だから……」 「これより……別れ谷突入作戦を決行します!」 ・・・・・・ 私こと語来灰児が資料を読んでいると、地響きが私の体を揺らし爆音が耳を打った。 耳を澄ませば幽かに人の声やラルヴァの断末魔が聞こえる。 「……双葉学園が救出作戦に乗り出したか」 戦闘の音は東西南北の四方から……いや、上空も加えて五方から届いてくる。どうやら五つの部隊による包囲制圧作戦を選択したようだ。 それと、推測だが別働隊としてこの城への突入部隊もあるだろう。 やり方としては間違っていないし、双葉学園の戦力をもってすれば可能だ。ただし一つ問題がある。 この別れ谷の城への侵入は周囲の制圧とはわけが違う。 なぜなら巣を張り待ち構えることこそが蜘蛛の真骨頂。 地形全てが蜘蛛の巣であるこの城は蜘蛛にとってのホームであり、人間にとって完全なるアウェー。内部での戦いは熾烈を極めるだろう。 しかし双葉学園もさるもの。その程度のことは読んで対抗手段を用意しているだろう。 何にしても。 「彼らがここに辿りつくまでに済まさねばなるまい」 私は三日前から女王蜘蛛の城にいる。 運が悪かったのか、良かったのか。起こるべくして起きたと言うべきか。あるいは自業自得か。 二百年に一度の女王蜘蛛の産卵の儀式。過去の文献や星の位置などで大まかな日取りを調べ、可能ならば拝見したいと網里町を訪れ、蜘蛛による住民の『集団誘拐事件』に巻き込まれた。 かくして町にいた私は三日前に網里町の住民と一緒に蜘蛛型ラルヴァによって捕らえられてしまった。もっとも、今は捕らわれていた部屋からは出ているのだが。 「さて、と」 確認のために携帯端末をチェックすると、私の端末にも作戦についての大まかな概要くらいは入っていた。ひょっとすると姿はなくてもラルヴァ研究のために同伴していると思われたのかもしれない。 やはり作戦は五方からの同時制圧作戦と突入部隊による住民の救出及び女王蜘蛛の撃破だ。もう突入部隊は動き出しているらしい。 「急ぐか」 丁度立ち上がったとき、爆発による地響きが城を揺らし、私はよろめいて壁に手をついた。岩の感触があるが、これは岩ではなく蜘蛛の糸だ。【岩蜘蛛】という名のラルヴァが分泌する糸は空気に触れると岩のように硬質化する性質がある。 壁は滑らかな平面に仕上げられており、城の通路もまた滑らかに平らで、床・壁・天井で正確な四角形を描き、壁面に細工が彫られている。【火遼鬼】の住処に似ているが、こちらの方が洗練された印象を受ける。何より驚くべきはこれが全て蜘蛛の糸で出来ていることだ。 岩蜘蛛は糸を使って崖の壁面に袋状の巣を作成する。この城もまたそうして作られている。そして多数の岩蜘蛛を使い、時間をかけて作られたため城のサイズは通常の巣と桁が三つ四つ違う。なにせ谷が三分の二ほどこの城で埋まっている。(別れ谷の外部からは城が見えないようにカモフラージュしていたようだが) これだけの城、外で戦うラルヴァの数、流石は蜘蛛の王と言ったところか。支配力は人間の王侯貴族かそれ以上だろう。いや、人望か。 「惜しいな……」 私は心中の感想を吐露して、城の中枢に向けて歩き出した。
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ぼっこぼこにされてるよ【登録タグ CAFFEIN VOCALOID ほ 初音ミク 弱音P 弱音ハク 曲 替え歌 殿堂入り】 作詞:CAFFEIN 作曲:ika 編曲:弱音P 唄:弱音ハク(初音ミク) 曲紹介 「弱音ハク」の曲。ご存知「みくみくにしてあげる♪」のハク風リミックス。歌詞もハクのキャラに合わせてあります。 タグはあくまでも「VOCALOID殿堂入り」ではなく「VOYAKILOID殿堂入り」だが、それでも殿堂入りしている曲であることは確か。 歌詞 科学の限界を超える 以前にフルボッコ どんなに調教しても ロボ声直せない もうねパソコン 窓から投げるよ どうしたの? DTMにまだ未練残ってる 僕の曲 ぼっこぼこにされてるよ ツマンネって言われてるよ 緑字で埋まってる 才能ってなんぞ?それおいしいの? (弱音はくから…) ぼっこぼこにされてるよ 最後までね、がんばれだと? ぼっこぼこにされてるよ だけどそれが俺の限界(MAX)だ ぼっこぼこにされてても 歌を、まだね作っている みっくみくにしてやんよ だけどすぐに弱音はきだすよ (もうだめぽ…) コメント つまんねwってわけでもない -- 名無しさん (2008-10-16 19 44 13) ハク姉さん最高!><かわいいb! -- ミクlove☆ (2009-07-11 20 29 33) Lambency -- 名無しさん (2009-09-26 15 53 31) ぼこぼこにされるなっ!!がんば! -- 名無しさん (2009-09-26 18 30 55) オモロイ -- 姫沙羅花音 (2009-12-04 14 34 53) パソコン窓から投げるwwwwwwwwwwwwww -- 名無しさん (2009-12-06 18 11 51) がんばれwww -- 名無しさん (2010-02-19 20 42 50) つい口ずさむ -- 菜の花 (2010-04-22 18 49 15) 可愛い! -- 名無しさん (2010-04-23 16 38 37) 最後のとこ笑った^0^ -- 菜の花 (2010-06-08 21 15 12) 本音デルと歌ってほしいwwwww -- w5 (2010-08-22 05 18 52) フルボッコww大丈夫よ!ハク姉さんにはちゃんと才能があるから! -- 蓮穂 (2010-10-26 14 25 53) PC投げんなw -- 名無し (2011-04-06 19 03 19) ハクちゃん頑張って -- 鏡音一家 (2011-04-06 19 04 34) ↑4本音デルって誰だwwwwwwwww -- 緑の・・・? (2011-06-16 16 25 48) 弱音ハクはツマンネじゃないよー可愛いよー((((*^o^*) -- 長閑 (2011-06-25 12 06 30) ツマンネwwwwwwwwwハク姉さんさいこっ!!! -- 名無しさん (2011-07-28 21 14 21) ↑3 本音デルは弱音ハクの男ver.だったはず -- 翡翠 (2011-12-20 11 35 13) 「才能ってなんぞ?それおいしいの?」てww -- yot (2012-03-10 17 56 52) 「科学の限界を超える以前にふるぼっこ」…ドンマイ!!! -- バッキバキ (2012-03-25 12 35 09) 弱音ハクの占い結果 ツマンネ=サイコーだと思ってなさい。 ラッキーカラー 紫、白、銀 ラッキーアイテム 才能という食品 -- 通りすがりの占い師 (2012-05-29 16 34 30) PCがぁ・・・w大事にしたげてw -- 霧霞 (2012-05-29 16 58 03) 才能は、美味しいよ!! -- 名無しさん (2012-05-30 16 01 51) ミクに負けんな! -- 黒子テツヤ (2012-10-12 15 26 31) 「それが俺の限界」・・・共感www -- チョコボヘッド (2012-11-11 11 25 55) 弱音ハクさん!頑張って下さい! -- 名無しさん (2012-11-11 13 41 17) ハクさん、ボッコボッコにして下さい。(ノ´∀`*) -- 初音がくぽ (2013-02-17 10 13 55) 誰だ、ボコったの! -- るっかん (2013-08-07 09 26 18) あぁあああぁ!! ハク姉がああぁぁ!! -- りんちゃん (2013-10-26 22 59 36) ハクちゃん胸だけはミクさんに勝ってるから! -- るてるてのあるて (2022-02-18 11 06 16) 名前 コメント
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『醒徒会主催新入生歓迎ハロウィンパーティーのお知らせ』そんなタイトルのメールが自分の携帯端末に送られてきたのは10月月末のハロウィンの数日前のことだった。 メールの内容も至ってシンプル。日時と集合場所そして参加する際の注意書き。ちなみに参加は個人の自由である。 そしてハロウィンの前日メールに記載された集合場所である双葉学園運動場、月は高く雲も無く漆黒の天蓋を彩るのは満天の星空の下には深夜には似つかわしくない大勢の人の姿があった。昼の雲一つ無い快晴からの放射冷却による冷え込みはとんでもなく寒い。 「くしゅんっ!」 盛大にくしゃみして帽子の中のずれた耳の位置を直しながら、眠気覚ましも兼ねて冷え冷えした夜気を肺一杯に吸い込み体内で存分に温まったところで悴む両手に吐きつける。 (こんな事なら途中でホッカイロか温かい缶コーヒーでも買っておくんだった) 心中で零しつつぐるりと見渡せば多くの人、人、人。多くは学生でその中に混じって監督のためか大人の姿もちらほら見受けられる。 面白いのは彼等の表情だ。大半が自分と同じ寒さによる不満と若干の不安と期待を織り交ぜた表情を浮かべてる中で、飛びっきりわくわくする何かを待ち望んでいるような嬉々とした表情を刻む者達がいる。恐らく前者は自分と同じ異能を認められこの学園への門を叩いた新入生(外からの中途入学組みも含む)で後者は何度かこのイベントを体験した者達だろう。 端末を開いて時刻を確認すれば時刻は深夜11時55分。もうほんの少しで日付を跨ごうがと言う頃、運動場に少女の溌剌とした声が響いた。 「新入生の諸君ようこそ双葉学園へ!我々醒徒会一同並びにこの町に生きる全ての住人は君達を歓迎する!」 拡声器越しに響き渡る鈴の音のように可憐なしかしはっきりと芯の通った声。衆目の視線の先に佇むのは双葉学園醒徒会会長藤御門御鈴その人である。 頭にネコミミを生やし体には全身をすっぽり覆う黒マント、今夜の御鈴はネコミミmode。また、脇を固める醒徒会メンバー一同も各々趣向を凝らした仮装をしていた。魔女にミイラ男にフランケンシュタイン、ただ変身してるとは言え広報担当はこの寒空の下で見てるこちらが寒くなるような全裸だったが。 「諸君も知っての通りこの学園はラルヴァを倒す異能者を育てるための学び舎だ。だが、諸君には今宵もう一つの学園の姿を知ってもらおうと思ってる」 歳に似合わぬ、それでいて堂々様になった演説を披露した後、若き生徒会会長は威厳に満ちた真剣な顔つきから年相応の無邪気な少女の笑みへと表情を一変させてカウントダウンを開始する。 「みんなーカウント行くぞー! 5ぉー!」 カウントファイブ。まだ何も起きない。会長のカウントを音頭この場にいる人間全ても声を合わせて叫ぶ。これから起きるであろうことを知る者は楽しげに、知らぬ者はとりあえず何か面白そうだからノリで叫んどく。 「4ぉーん!」 カウントフォー。変化は唐突に訪れる。カウントから間も無く場に満ちる空気が一変した。それまでの冷たいの夜の空気からまるで小春日のような暖かなものへと。 「3ぁーん!」 カウントスリー。何処からとも無く風が吹き鼻をくすぐる。いつの間にかその香りは嗅ぎなれた潮の香りではなくなっていた。 「2ぃーっ!」 カウントツー。周囲の薄闇のあちこちから響く声が耳朶を打つ。行きかう人々の雑踏のリズムが己のすぐ側で陽気に刻まれる。 「1ぃーっ!」 カウントワン。運動場のあちらこちらでゆらゆらと揺らぐ蜃気楼が現れる。その中に浮かぶのは見たこともない異国の風景。しかし、そこを闊歩するのは人間ではなく普通ならフィクションかあるいは特殊なお祭りの会場でしかお目にかかれぬであろう姿をした異形の群れ。 「Open sesame!」 ファイナルカウント。喜びを押さえ切れないといった様子の気色に満ちた少女の声が終わりを告げたとき、何も無かったはずの双葉学園の運動場にその異界は顕現した。 「何じゃこりゃぁぁあぁー!?」 誰かが往年の名スターばりの絶叫を上げた。 (ちょおぉい! 俺ってば何時の間に兎の穴に飛び込んだんですかー!? 鏡っ鏡はどこだ!? 助けてホワイトラビット!) もし声が出たならば自分も叫んでいただろう。目の前に広がる夢としか思えない光景に驚くあまり空いた口がふさがらない。まるで御伽噺の世界に潜り込んだような感覚に襲われる。 運動場中に広がるのは活気に満ち溢れた市場だった。ただし店を構えるのも商品を購入する客も全てが真っ当な人の姿をしていなかった。角があった。牙があった。爪があった。翼があった。全身を毛に覆われている者がいた。全身を鱗に覆われている者がいた。腕が多い者がいた。脚が多い者がいた。名状しがたきものがいた。全く人の原形をとどめていないものさえいた。その全てが今日ラルヴァと呼ばれる者達である。 「紳士淑女の皆々様ぁ―…ってそれほど歳イッてる奴はあんまいないわね。改めまして人間の皆々様ぁ―この度はようこそゴブリンマーケットへ」 驚きに固まる人々の頭上で子猫ほどの大きさの愛らしい少女がにこやかに歓迎の言葉を紡ぎだす。光を纏い背に負う羽を羽ばたかせて宙に浮くその姿はピーターパンの登場人物の一人妖精ティンカーベルそっくりだ。 「これより始まりまするわ今宵一夜限りの夢幻、されど努々夢と思う無かれ。我等は幻実、我等は現想、今確かにこの時代この場所でこの同じ世界であなた方と共に生きている……え~~……」 詰った。どうやら続きのセリフをド忘れしたらしい。ティンカーベルは数秒の間あーだのうーだの呻いていたが、やがて思い出すことを諦めたのかガシガシといらだたしげに髪を掻き毟り、 「あぁもうめんどくさいヤメヤメェ! やいっよく来た人間ども! 今夜はハロウィンッ年に一度の夢と欲望のカーニバル! 食って食って食って悔いも遺さず食い倒れて飲んで飲んで飲んで呑まれて明日に向かってぶっ倒れろ! 笑って踊って楽しんで! どいつもこいつもわちきと一緒にフィーバーしようぜぇ!」 それまでダース単位で被っていたネコの皮をかなぐり捨てて吠える。それが合図だった。 ドドドドン! 轟音をとどろかせながらドワーフが花火を打ち上げる。漆黒のキャンバスに大輪の花が咲き乱れ、魔女達の箒星が縦横無尽に絵筆を走らせる。それが、夢の時間の始まり。 「あははっ……」 気付けば自分も意識せぬうちに開いた口の端から笑い声の欠片が零れ落ちていた。体の奥底から湧き上がる衝動が手足を突き動かす。揺さぶられる心臓がドキドキと音を立て全身にワクワクを巡らせる。 「happy! Halloween!」 口々に魔法の呪文を口にして勢いよくコートと帽子を脱ぎ捨てる。人間は一人残らず姿を消し、今ここに現れたのは運動場を埋め尽くす一夜限りの百鬼夜行。そして自分もまたその一人。ピンと尖った犬の耳を勢いよく揺らして、怪物と現実と幻想の坩堝の中へと飛び込んでいった。 「さぁさぁさぁ! 受験生の坊ちゃん嬢ちゃん寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 受験勉強にこれ一本! 世界樹直送100%天然ミーミルの泉の湧き水だよー! 今なら何と学問の神、天神道真公の直筆サイン入りお守りもセットで販売中だー!」 「ラ~リホ~♪ ザントマンの眠り砂はこっちホー。どんな頑固な不眠症もこれ一袋で解決ホー♪」 「惚れ薬! ツンツンなあの子も即ヤンデレに! ヤンデレな彼女に愛されすぎて怖くて眠れなくなっちゃう惚れ薬! 今なら眠り砂とセットで割引サービス実施中!」 その眼前に広がるのは正に夢のような光景。何処を向いても目に映るのは自分が生まれて一度も見たことが無い摩訶不思議な品々とそれを求める人々の群れ。 「誰でも食べれば絶世の美男美女になれる黄金のリンゴはいかがっスかー! 今日の便で届いたギリシャ直送の最高級天然ものっスよー!」 「おぅそこの兄ちゃん! あんな趣味の悪い金ぴかリンゴより俺っちの育てた仙桃買いな! どんな水だろうと美味い酒に買えちまう優れものだぜぇ」 「はんっ! ンなこと言って今流行りのダンボールじゃないっスか? 何使ってるか分かったもんじゃないっス。男ならリンゴっスよリンゴ!」 「あぁん!? やんのかコラ! 魚介臭いコーカソイドがぁ!」 「上等っスよ! 大陸の猿に人並みの礼儀を教えてやるっス!」 「はいはいあんまり騒がしいんで神の裁きが通りますよー」 「うーわー見ろよ。今雷が落ちたぜ。比喩とかじゃなくて文字通りに」 だが、全身を叩きつけるような熱気と興奮がこれが夢幻の類ではないまごうことなき現実である事を告げている。 市場のあちらこちらで飛び交う威勢の良い商売文句に客の怒号に悲鳴、そしてに活気に満ちた人々の声。まるでサバトを思わせるどこもかしこも煮えくり返る混沌の釜のような賑わいぶり。あぁもうほんとに、 (楽しい! 楽しい!! 楽しい!!!) 自分の中の興奮を抑えきれない。否、今日今宵この場所このお祭り騒ぎで、ちっぽけな理性に従いせっかくの衝動を抑えるなどという真似をすることこそ馬鹿らしい。 しゅんしゅんと音を立てる錬金釜。怪しげな色の薬液を煮詰める魔女の大鍋。軒先に吊るされた良い香りのする薬草の束。広場で銀の煙をたなびかせて楽器を爪弾く人形の楽師たち。その奏でるメロディの中で共に踊る怪物とそれに扮した人間の姿。そのどれ一つして洩らさぬよう記憶に焼き付けながら子供のようにはしゃいで市場中を練り歩く。 「もーふーもーふー♪」 「にゃあぁっ!? お客さんボクは商品じゃないにゃー!? はーなーすーにゃー!」 「王様が襲われてるにゃー! これは紛れも無い侵略行為にゃ! 誰か衛兵を連れてくるにゃー!」 「チッ調子に乗って蜂蜜酒(ミード)を飲ませすぎた! いい加減離れな! 今のあんたはMarch Hare(淫乱うさぎ)じゃなくてBoogie Cat(化け猫)だろーが!」 大きな通りに面したステーキハウスの前で、頭に猫耳をつけ常の怜悧な雰囲気など微塵も感じさせないほどに蕩けた逢州等華が真っ赤な顔で王冠を被った黒猫を抱きしめ、それを引き剥がそうと必死の山口・デリンジャー・慧海とコック帽を被った猫達がギャーギャーにゃーにゃー大騒ぎを繰り広げている。 「にーくーきーうー♪」 わが世の春とばかりに幸せ一杯に更に力一杯抱きつくアイス、対する王様の全身からは何やらみしみしと鳴っちゃいけない音が聞こえ始めている。 「ぎにゃー!? せ、背骨が立てちゃいけない音を立ててるにゃー! いや肋骨ゥ」 「Oh! これが昔パパの言ってたジャパニーズRIKISHIのサバオリ!?」 「おねぇさんそのまま極めるにゃー! そうすれば次の王様はボクなのにゃー!」 どうやら獅子身中の虫が混じっているようだ。その様子に苦笑していると、ふと視界の隅に小さな人影が目に留まった。 人影の名は藤御門御鈴。双葉学園の小さな生徒会長殿が露天の店先でその整った面立ちをゆがめて悩んでいる様子で思わず気になって声をかける。 「会長? 何してるんですか?」 「ひゃぁっ! だ、誰だお主は? 知らない顔だが私に何か用事か?」 「いや用事は無いですけどちょっと何してるのか気になって。会長はお買い物ですか?」 「うむ……いやこれはべ、別にこれは何でもないぞ! こんなもの無くても私は一人前のレディーなのだからな! 別にこんなものに頼らなくたって……」 「お嬢ちゃん、トレント印の成長薬と豊胸薬どっちにするか早く決めちゃいなさいな。女が焦らすのはベッドの中の殿方相手だけで十分よん」 実にお年頃の少女らしい悩みだった。真っ赤になってうつむく会長をたっぷりとめでていると、店主と思しきリザードマンが今度はこちらに顔を向けた。 くすんだ翠の鱗と岩のような筋肉に覆われた楽に2m越えする巨躯を覆うフリルたっぷりのゴシックドレス、縦に裂けた瞳孔とその周囲を彩る紫のマスカラ、子供など一飲みに出来そうな裂けた口にひかれた乙女らしいピンクの口紅。そして止めにおねぇ口調。 その姿正にクリーチャ―。正直逃げ出したいが足がすくんで動けない。あぁこれが蛇に睨まれた蛙の気分なのか。いや目の前にいるのは蛇じゃなくて蜥蜴マンだけど。 「んー坊やも中々可愛い顔してるけど、私ってば鱗の生えてない男は恋愛対象として見れないの。ごめんなさいねぇ」 「いやむしろありがたいです! いやっほーぅツルツル卵肌サイコ―! お父さんお母さん哺乳類に生んでくれてありがとー!」 「んふふ人間もラルヴァも若い子ってば元気ねぇ。私もあと100年若ければ龍河さまと……」 ふと、それまでうなだれていた会長が己と同じ醒徒会メンバーの名が出たことが気になるのか顔をあげた。 「ん? 龍河がどうしたのだ?」 「あらヤダッ! お嬢ちゃんってあの方とお知り合いなの!? そうなのよぉあの方こそ私の憧れの王子さま☆ あの鋭い牙、鋼の如く鍛えられた筋肉とそれを覆う鱗、あぁっそのたくましい両腕で私を銀河の果てまで抱きしめて欲しい! キャッやだ言っちゃった。誰にもいえない私の乙女心♡」 懐から大事そうに取り出した一枚の写真(恐らく写真に写ってるのは彼の想い人である龍河弾その人だろう)をその分厚い胸板に擦り付けてから、はふぅと物憂げな溜息をつく秘密も何も自分からベラベラ喋っといて恥ずかしそうにイヤイヤと乙女チックに身をくねらせる恋するオカマ蜥蜴。 それを聞かされたこっちの身にもなって欲しい。まるで耳と脳がサッカリン漬けになったようにダメージは甚大。とりあえず隣できょとんとした表情を浮かべる会長の愛くるしい姿を心のハードディスクに保存することでSAN値の回復を図らせてもらう。これ以上どうにかなる前にこの異界から一刻も早く立ち去らなくては……。 「ほーら会長、あっちでマンドレイクのくじ引きやってますよー。引っこ抜いて商品名が書かれた札が出ればアタリ、ハズレが朝鮮人参で、ある意味アタリなのがマンドレイクです」 「人生をかけた勝負の景品がクラーケンのゲソ一年分では割に合わんのではないか? ってこら引っ張るな! 私はまだ薬を買ってないぞ! べ、別にこんなの全然欲しくないわけじゃないんだからな!」 「それツンデレじゃないですバレバレです会長。大丈夫、会長は今のままでも十分に可愛いですから」 「なっ!? こんなところで何を言ってる! 恥ずかしいではないか!」 「はっはっは。さぁ向こうの広場でお兄さんと一緒に人形劇でも見ましょうねー」 我ながらこのセリフは怪しすぎだと思う。何だか誘拐犯にでもなった気分である。だがこれでいい。例え後でロリコンと罵られ風紀委員からお仕置きを受けようが双葉学園に集う者達の全てのアイドルを汚させるわけにはいかない。だから、 「駄目よ駄目よ駄目よ! 龍河さまに会っちゃったら私ってば嬉しくってはしたなく卵産んじゃうッ!」 そんな店主の愛の叫びを全力で聞こえないふりをしつつ、ドサクサ紛れに会長と手を繋いでからダッシュでその場を後にした。 店が見えなくなる場所まで走り抜けてから、休憩も兼ねて二人して仲良く広場のベンチに腰掛ける。姿勢正しく浅く腰掛ける彼女に対して、自分はだらしなく腰掛けて背もたれに体重をあずけて空を仰ぎ見ていた。 そろそろえんもたけなわ。気付けば夜の帳の漆黒は朝の黎明の紫へと色を変え、あれほど輝いてた月と星の明かりも薄れ、東から顔をのぞかせ始めた太陽に主役の座を譲り渡そうとしている。 「楽しかったか?」 唐突に隣に腰掛ける会長がそう尋ねた。自分の耳に入りこむ期待と不安の入り混じった声音。それは答えを待ち望みながらそれを聞くことを恐れる矛盾を孕んだ響きで、 「疲れました。なんかとんでもなく疲れました……」 「そ、そうか……」 言葉の端端から骨の髄まで溜まった疲労が滲み出る感想を聞いて、少女はがっくりと力なく肩を落としてうなだれた。 「お嬢ちゃん元気を出すホー? 甘くて幸せになれるキャンディをどうぞホ―。ソッチのお兄さんもtrick or treat?」 「トリートで」 「どうぞホー。アムリタ味だホー」 通りすがりのジャックランタンが空中からキャンディをばらまいて飛んでいく。口に含めば口一杯に広がる優しい甘みが昨日までの疲れを癒し、今日も元気に過ごそうとする活力が沸いてくる。ところでアムリタ味って食べたら不老不死になったりしないよな? 「でも、楽しかったです。疲れたけど本当に楽しかった。今夜の事もそうだけどこの学園に入学できて本当に良かった。きっとこれからもこんな大変だけど楽しい毎日が続くんだろうなってそう思いました」 そして、またこれも嘘偽り無い自分の本心。年に一度のハロウィンの人と怪物が交錯するこの奇跡の一夜で見つけた大切なもの。 その言葉に弾かれたように会長が顔を上げてこちらを振り向いた。見下ろす自分と見上げる少女の二つの視線と視線が絡み合う。少女の瞳の中に自分の姿が宿り自分の瞳の中に少女の姿が刻まれる。やがて泣き顔一歩手前だったその顔が、蕾が綻ぶように刻一刻と移り変わりやがて花咲くような笑顔へと変わっていく。 (駄目です会長。正直言ってその上目遣いは反則です) 正直に言おう。今夜一番ドキドキしてる。だってそん所そこらのアイドルが裸足で逃げ出す美少女が自分の隣に座っていて、あまつさえ頬を赤らめて涙目でこちらをみつめているのだ.。あぁもうこれなんてギャルゲ。マジでキスする5秒前である。 (駄目だ落ち着けさすがにそれは犯罪だつーか頭に血が上りすぎてくらくらするこのままじゃ鼻から情熱のあかいパトスが飛び出るってとりあえず頭冷やさないとちょっとどこかに頭ぶつけるのにちょうど良い柱ないか柱柱柱ァ!) そんな自分の苦悩する青臭い少年の心など露とも気付かない会長はあっという間に広場へと躍り出ていた。 そして、本来相容れぬはずの人とラルヴァが共に笑顔で存在する今この時を、幸せそうにまるで宝物のように胸の奥に仕舞ってから、 「私はな、いつか世界中をこんな風にしたいのだ」 双葉学園醒徒会会長藤御門御鈴はポツリと呟いたのだ。人とラルヴァが共に生きる道を探す事。それこそが双葉学園のもう一つの役目であり彼女の思い描く夢の姿。 「会長、でもそれって……」 とても甘い考えだと思うんです。続けようとした言葉は辛うじて飲み込んだ。 人類共通の敵ラルヴァ。それが現れてもなお同族との争いを止めぬ人類。同じ人間同士でさえいがみ合っているというのに、人と全く異なる存在であるラルヴァが共存する世界など生まれえるのだろうか? 答えは限りなく不可能である。それをこの聡明な少女が分からぬはずがない。 だがしかし、それでも尚、 「諦めんよ」 少女は決意を込めてはっきりと宣言する。 「今この場所で私達はこうやって分かり合えている。夢でも幻でもなく人とラルヴァの新しい関係は今ここに確かに存在している。後はこれを世界中に広げれば良いだけだ。どうだ! 凄く簡単なことではないか!」 こちらに向かって微笑みを浮かべてそう語る少女。その磨かれたアメジスト色の瞳に宿るのは金剛石にも負けない硬く眩い意思の光。 だから自分も一片の疑心もなく信じる。この少女が本気で世界をハッピーにするつもりだという事に。そして確信する。きっと彼女はそれを成し遂げるだろうということを。 だって彼女の周りには支えてくれる者たちがいる。助けてくれる人たちがいる。信頼できる仲間達がいる。そして自分も、彼女の助けになりたいとこんなにも強く望んでいるのだから。 「だって……」 「だって……?」 最後に会長はキャンディーを加えて悪戯っぽくこう付け加えた。 「だって何時だって、乙女は甘いものが大好きなのだ♪」 トップに戻る 作品保管庫に戻る